アルミトレイケースの不快な音を除去して「整音化」する
この記事はキーボード #1 Advent Calendar 2020の9日目の記事です。8日目の記事はもんくさん(@monksoffunkJP)の自作キーボード界隈という世界の奥行きでした。
さて、いつでも購入出来る60%サイズのアルミ製のトレイマウントケース。私はKBDFANS TOFUとKBDFANS 5degを買って、拙作のTreadstone配列の60%PCBを入れて愛用しています。
このアルミ製のトレイマウントケースで気になるのが打鍵時にアルミケースから発せられていると思しき不快な音。底打ちの打鍵をすると「コォンコォン」「カァンカァン」と気になる音が鳴ります。またネジを受け止めるポスト近辺から離れるにつれて打鍵音の音の高さや底打ちの固さも変わったりして、GroupBuyで販売されているような高級キーボードがみなトップマウントやガスケットマウントなど、マウントにこだわっている所以でもあったりします。
私もPolarisやEquinox、VISIONなど音質やマウント方法にこだわったキーボードを買って使っているのですが、お手頃なトレイマウントでもお手軽な改造で良い音させたい!打鍵感を向上させたい!!と試行錯誤しておりました。
ということで、私のアドカレ記事はトレイマウントの音と打鍵感を整える「整音化」の方法を紹介しようと思います。
以下はすべてTreadstone60PCBを使っていますが、普通のrowstaggeredのPCB(GH60やDZ60など)もこのテクは使えると思いますし、Planckケースのような他のトレイマウントにも有効だと思います。
用意するもの
ネットを探せば全部見つかると思いますが、弾力などの現物調査も兼ねて実店舗で見つけたものを使っています。
- EVAスポンジシート 1.5mm厚 A4サイズ、もしくはKBDfans module foam
- ポロンスポンジ 片側がシールになってて5mm厚のもの(必要な厚みはケースによって変わるかも)
- 2mm径のOリング
もちろん、アルミトレイケースと60%PCBとプレートも必要です。
EVAスポンジシートもしくはKBDfans module foam
EVAシートはDAISOで見つけたものを使いました。
後述するカットが面倒なら、写真のようなカット済みのフォームでもいいです。
KBDfans module foamはKBDFansで直接買うか、遊舎工房で取り扱いがあります。
ポロンスポンジ
ホームセンターのゴム板などが置いてある売り場のもの(WAKI製)を使いました。全面に使おうとするとちょっと高いのですが、手順③を見てもらうとわかると思いますが10x10cmくらいで足りると思います。
厚みはケースとPCBの間がどれくらい空いているかなどにもよりますが、KBDFans 5degやTOFUケースに合わせると5mmが丁度いいです(写真は調査用に買った10mm)
上のKBDfans module foamを買ったのなら、余った所を切って重ねて貼り付けるというのもアリかもしれません。
2mm径のオーリング
大阪・日本橋のデジットのメカトロパーツ売り場のもの(素材・メーカー不明)を使いました。
2mmのOリング(オーリング)はネジを通せる程よい厚みと弾力、ポストの上に乗るくらいの大きさのものが良いです。
手順① ケース、PCB、マウントプレートを分離する
ケースとPCBを取り付けている6ヶ所のネジを外します。写真のように
- tab
- capslock
- 左shift
- G,Hキー
- スペースバー右横のキー
- 右shift
- Enter
- Enter上のキー
のキャップを取り外せばネジにアクセス出来ます。
(※鉛シートを貼ればアルミケースの振動が抑えられて良いのではないかと思って貼り付けていますが、反響音の減衰が速くなる感じはしますが不快な音の解消までは出来ず…)
ケースから外したら、今度はスイッチを全部外してマウントプレートとPCBを分離します。
手順② PCBとマウントプレートの間にEVAスポンジ、もしくはKBDFans module foamを挟む
マウントプレートのサイズにあわせてEVAスポンジを切り取り、スイッチの穴とネジ穴部分をくり抜きます。最後にスタビに干渉しないように現物に合わせてカットしてください。1.5mm厚なので2枚用意します。一枚作業を終えたらそれをコピーする感じで。重ねて使います。
入手性のよさと加工のしやすさ(重要)でEVAスポンジを選んでいますがPCBとマウントプレートの間を適度に埋められればだいたいなんでも良いです。
KBDFans module foamを使う場合は、スタビに干渉しないように気を付けながらプレートに貼り付けてください。
加工が終わったらプレートとPCBをの間に作ったものを挟んで、スイッチを取り付け、文字列キーだけでもキーキャップを取り付けておきます。
手順③ PCB裏にポロンスポンジを貼る
PCBの実装部品があるほうにポロンスポンジを小さく切って実装パーツに干渉しない場所に貼り付けます。まずケースとネジ留めするネジ穴に近いところに貼り付けます。
トレイケースだとスペースバー左部分と数字列あたりは脚のない不安定な状態になっていて(ケースによっては補助脚みたいなのが内側壁にちょっと出ていますが)打鍵感の違いが出ています。それを緩和するためスペースバーの左のスタビ穴近辺、数字列の4と0あたりにも同様に貼り付けます。数字列はケースによっては他の部分とケースの厚みが変わっているので、その場合は5mm厚を半分の2.5mmに割いたスポンジを付け足して7.5mm程度に調整したほうが良いでしょう。ケースの脚より少し高めの位置にPCBが浮く程度になればOKです。
手順④ ケースにPCBを取り付け
2mm径オーリングをケースの6ヶ所のネジ穴の上に載せ、オーリングが落ちないように静かにPCBを載せます。
載せたらPCBを上から押さえてネジを締めていきます。全部のネジを一旦止まるまで締めてください。
締めたらキャップのついたキーを打鍵してみて、音が良い感じになるように全部のネジを緩めたり締めたり調整してください。
以上で改造前から音がずいぶん変わっているハズです。
理屈・考察など
手順②については、PCBとプレートの間の空間でスイッチの底打ちの音が反響するのを防ぐためです。
手順③と④については、打鍵時の衝撃をケースポストに直接伝えないこと、打鍵感の均一化のためです。打鍵時の衝撃がスイッチ→PCBからケースのポスト(ネジを受けるために出っ張った脚)へ伝わってアルミケースが振動して音が発生しているため、ポストに伝わるまでに衝撃を減衰・緩和させる必要があります。そこでPCBとケースの間に2mmのオーリングを緩衝材として入れていますが、オーリングもネジを絞めつけ過ぎるとその効果が薄くなり、ゆるすぎると逆にガタガタとした別の振動が発生して気持ち悪いので、ポロンスポンジの適度なクッション性と厚みを利用してネジの締め付けの幅を広げられるように、かつ打鍵の衝撃の分散を狙っています。
またポロンスポンジを貼ってネジを緩めて少しケースから浮かせつつも脚となる部分を作って、ポスト近くとそれ以外のキーの打鍵時の音や底打ちの固さの違いを緩和するねらいもあります。
※データも無く根拠の乏しい個人の感想のようなものなので是非だれか検証してください💦
まとめ
アルミ以外のケースでもG、Hキーとそれ以外で音が違うといった打鍵感の違いにこのカスタムは効果がありますが、アルミケースでタクタイル、特にHolyPanda系のステム軸がハウジングに当たって音がするタイプのスイッチを使っていると効果がよくわかります。気になっている方は是非トライしてみてください。
最後に、これよりももっと簡単に良い感じに良い音、打鍵感になるぜ!というのがあれば是非教えてください!
蛇足
私はそれぞれ仕様の違う3台で検証していたんですが打鍵感と音が改善されて無事ENDGAME。
実は打鍵音や打鍵感の改善のためにネジ留め部周辺に切り込みをいれたTS60β、リーフスプリング形状にしたγを作ってはみたものの結果としてはまだまだで、おそらくもっと柔らかいバネになるように切れ込みを深くしないと不快な音の解消までには至らないだろうというのが結論。ただしそれを行うと打鍵時の衝撃による疲労で壊れやすくなるだろうし、そもそもPCBのパーツ配置や配線の制約もあるので実際は厳しいだろうなと考えています。
PCBの仕様自体は見直したいなと思いつつ、販売コストと売れ行きを予測するに(試作売った分で欲しい人には行き渡っただろうし)見合うほど売れないだろう、という判断により今後の販売予定はありません。PCBデータ公開もありません。
もし欲しい!!!!って方がいたらツイッターやdiscordでつぶやくかDMください。5名くらい観たら次の試作を考えます😊(1名だけなら手持の完成品PCB/FR4プレートを譲るなどでも良いかなぁ…)
(TS60じゃなく普通のRow-Staggeredタイプで今回のポロンスポンジを貼り付けやすいようにダイオードの位置を変えたモノはいずれ作ってみたいかもーと思ったりはしています…)
左:Treadstone60βPCB/ブラスプレート/HolyPanda
中:Treadstone60βPCB/FR4プレート/Gatelon Ink Black
右:Treadstone60γPCB/FR4プレート/Diamond Starstone
この記事はTreadstone60γ/FR4プレート/Diamond Starstone(lubed)/KBDFANS TOFU case(整音化済み)で書きました。